Golden Ball

「お母さん、学校に子供新聞があったよ。大谷さんのチケットが無料でもらえるって書いてあったよ」と一年生だった息子が教えてくれた。「飛行機に乗ってさ、行くんだね、当たった人は。ずいぶんのんびりしてると思うよ」息子はそう言い捨てて宿題に取り掛かった。ちょいちょい待ちなさいよ。誰?最後は誰が憑依した?
「ずいぶんのんびりしてるよ思うよ」7歳の口から出るには違和感しかない言葉である。
私じゃない。私の口癖じゃない。でも聞き覚えはある。私はしばらく考えた。そうだ、母だ。今年80歳になる私の母だ。なんだろうこのふわっとした嫌悪感は。
そんな80歳の口調をした息子は今、習いたての漢字を使った例文を考えている。その漢字とは「玉」である。キッチンに立つ私に、真面目なトーンで突然こう言うのだ。
「『金玉』ってさ、『金色の玉』にも使う?こうやって投げるボールの。金のやつ」と。
その発言とその表情のギャップに吹き出しそうになりながらも私はあくまで冷静に返答する。「金のボールは『金のボール』じゃない?『金玉』ってなかなか聞かないぜ」と。「そうか」と言ってノートに向き合う息子。書くなよ、書くなよ!例文に「金玉」は絶対に書くなよ!
果たしてクラスで何人の男の子が「金玉」と書いただろう。書きたかったのに親御さんに止められた子もいたかもしれない。まともな親は止めるのだろうか。それとも子供の考えを尊重し「金玉」と書かせるのだろうか。「まとも」とは一体なんなんだろうか。「金玉」によって親の在り方をも考えさせられた私である。
とにもかくにも、息子の口から発せられた「金玉」の言葉に安堵した。やっぱり7歳はこうじゃなくっちゃ!

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\ 私が書いています /

神奈川県出身。
夫と2人の子供と4人暮らし。
スペインに約1年間滞在した経験があり、ピソでの各国からの友人たちとの生活は、今思えばまるで映画の中のような世界でかけがえのない時間となった。しかしあの時必死で身につけたスペイン語はいつの間にか風に吹かれて消えていった。今となってはあの1年が壮大な妄想だったのではないかと思い始めている。信頼と語学力は努力を怠れば一瞬で消え行くのである。
40代に突入し身につけた特技と言えば、簡単に2キロ太れるというどうしようもないもののみ。
人生の一冊は『Jimmy』。もしも人生を悲観する日が来たら再び手に取ろうと決めている。

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