いつもドラマや映画など新作を見始めるのは夫が先だ。私は彼が観ているものをチラ見して、いつの間にかハマっているスタイルが定番となっている。限られた一人の時間に楽しめる確証のない作品に手を出す勇気を持てない。冒険をしなくなった私は歳を取ったのだろうか。
歳を取ったと言えば、『地獄に堕ちるわよ』で歳を取った細木数子を演じる戸田恵梨香のメイクには無理があるだろうと、何話見ても登場の度心の中でつっこんでいる私がいる。恰幅の良かった細木数子と、華奢な戸田恵梨香とでは似ても似つかない。メイクも髪型も、もう少し何とかならなかったのかと思う。やはり女優さんたるもの美肌であるが故、実年齢よりも上の役を演じれば不自然さが生まれるのは仕方がないのだろうか。
とは言っても、若い頃の細木数子を演じる戸田恵梨香は自然体でありやっぱり演技が上手い。気の強い女性役は彼女の腕の見せ所なのかもしれない。
センシティブなシーンが多々あり、ドラマは16禁となっている。そんなシーンを観る度夫は言う「産んだばっかやよ」と。どうやら夫はこのドラマの撮影時、戸田恵梨香は産後間もない授乳中だと思っていたようだが調べてみたところ、どうやら産後3年での復帰作とのこと。産後3年経っているとは言え、母モードから女モードへのギアチェンジは大変だっただろうと思う。家ではまだ3歳の子の母、外では戦後の無秩序な社会に生きる細木数子でなきゃいけないのだから、そのギャップはチョコレートと謳った原材料ほぼ砂糖の準チョコレート菓子と、一口で顔中の毛穴が全開の激辛キムチを交互にずっと食べているようなものだろう。(もっとわかりやすい例え募集中)
私には3歳の子を育てながら細木数子として生きる勇気は一ミリもない。もっとも、私の人生において細木数子として生きてほしいとリクエストされる可能性も一ミリもないのだけど。
昨日私と夫が観た最後のシーンは、戸田恵梨香と生田斗真の濃厚濃密キスシーンであった。彼の顔の濃さも相まって、それはそれは家系とんこつラーメンのようなキスシーンであった。いや、例えを間違えた。決して脂っぽくギトギトなキスシーンではない。ん~、綺麗だけど濃厚…例えるなら鶏白湯ではなく、透き通った鶏ガラスープのあっさりだけど奥深いラーメンだろうか。やっぱりしっくりこない。そもそもキスシーンをラーメンで例えること自体に無理がある。
そんなキスシーンを観て気になったことがある。それは、カットがかかったあとの俳優たちの振る舞いだ。散々濃厚鶏ガラスープなキスをしておいて「はいカット―!」の声がかかれば、何もなかったように振る舞うのだろうか?スンとして「ちゃす」みたいな。それとも無意識にもいちゃついてしまうのだろうか?いやいやそんなことをしてしまえばきっと松坂桃李が黙っていないだろう。でも、昨日の二人はそのシーンが示す「この瞬間を心の底から待っていた」といった表情を見事に表現していたように思う。それは演技力なのか、それともついつい出ちゃった本心なのか。もし大根役者のはずがキスシーンだけやたらと上手い俳優がいれば、間違いなく後者だろう。そもそも、いくら演技とは言えイケメンと美女がキスをして恋心が発生しない方がおかしいのではないか?お互い独身であれば、そのままお付き合いに発展してもなんらおかしな話ではない。私はいつも、恋愛関係を演じた二人はいつか撮られるだろうと、勝手に一人で予想しているのである。予想が外れた時には、どちらかのお口が臭かったか、もしくは見た目とは裏腹に性格が最悪なのか、はたまた男側のナルシズムが過ぎるのかと恋愛に発展しなかった理由なんかも、かなりの偏見をもって想像してみるのである。
なんやかんや言って、私がこのドラマで一番好きなのは、小説家を演じる伊藤沙莉ちゃんだ。そこに台本はあるんか?と問いたくなるような、彼女の自然な演技は本作品に必要不可欠だ。唯一無二の声、自分の個性を武器にしたその魅力ある表情に毎度引き込まれてしまう夫と私なのだ。
Netflix『地獄に堕ちるわよ』

