『ごんぎつね』というベストセラーの絵本があるのをご存じでしょうか?どうやら教科書にも載っている作品だそうですが、私には読んだ記憶がありませんでした。(図書ボランティアに属していながらなんとお恥ずかしい!)ある日の新聞で、偕成社版の『ごんぎつね』の絵を担当した黒井健さんという方の記事があり、そこで初めてこの絵本の存在を知ったのです。『ごんぎつね』が誕生して100年、これまで様々な画家たちがその絵を手掛けてきたそうですが、黒井さんが描いたものは発売から40年になるそうで。私が2歳の頃からだと思うと、ますます歴史を感じる…。やわらかで繊細なタッチの表紙にはどこか寂しさを覚え、悲しい結末を物語っているようです。黒井さんにとって『ごんぎつね』はそれまで不調だったご自身の仕事の救世主となったというようなことをその新聞で読みました。新聞からの感想をメモしていたのですが、あまりにも内容が薄すぎて、デジタル版に登録しもう一度その記事を読み直しました。やっぱりお宝記事はスクラップしておくべきだった!
さて、私のメモにはどんなことが書かれていたかというと、
―ごんぎつね作者の記事(作者ではない)
誰かの依頼を断ることなくやってみたら違う世界が見えてくる 自信へと繋がることもある
「セオリー」よりも自分の納得する自分で良いと思うものを書けば 世にあふれる作品になることなく最高の作品となる―
このメモにタイトルを付けるなら、『内容も筆圧も薄いメモの取り方【永久保存版】!』でしょうか。内容が薄すぎてなんのこっちゃわからんので、ここから補足したいと思います。
黒井さんがこの絵本の絵を担当することになったのは、当時苦手だった編集者からの依頼だったと言います。その編集者は厳しく、「もう二度と一緒に仕事はしない」と思うほどの人物だった。ところが、そんな人からの半ば強引な依頼を引き受けたことが、彼の人生を変えたのです。
黒井さんの言う「セオリー」とは、絵本の世界では明るくかわいく輪郭のはっきりした、今でいうキャラクター的な絵を描くことを意味しています。でも、黒井さんはそんなセオリーに反して、子供に向けたものではなく自分の感じたままに絵を描きました。これでいいのかという不安もあったようですが、それ以外の選択肢が一切思い浮かばなかったとのこと。
その結果、黒井さんの描いた『ごんぎつね』は40年にも渡って読み継がれる本となりました。
自分の心に反することなく描いたことによって、自分でもうっとりするような最高傑作が生まれたのです。
この記事を読んだ直後、嫌いな人からの依頼を断ることなく受け入れたことに大きな意味を感じましたが、再び読んでみて、やっぱり成功の陰には誰かの存在があるのかなと感じました。以前読んだ『Jimmy』の中で、ジミー大西が画家として活躍するに至った陰には彼の才能を呼び起こさせたさんまの存在があった。黒井さんのこの成功のきっかけももしかしたら、黒井さんにとっては苦手な存在だった編集者の存在があったからなのかもしれません。やっぱり私たちの人生には、人生を変える誰かとの出会いがあるんですね。
ただ、当然ながら黒井さんがその依頼にセオリー通りの描き方で引き受けていたら、40年にも渡って人々の心に響く作品にはなっていなかったかもしれません。
自分の書いたメモを読み返して、最後にこう付け足しました。
―人生も同じ セオリー通りに生きない
自分の良いと思うものを選択しながら生きれば 最高の人生になる―
SNSがあって、今はいろんな人の生活や価値観がやたらめったら共有されてしまっています。一度しか会ったことのない人について、さも昔から知っているかのような情報量を持っていると気づいた時にはちょっとぞっとしました。
そして人の情報に溺れ、気づけば自分の価値観をうっかり見失いそうになります。
仕事、結婚、子育て、子供の習い事や受験なんかも。
何がいいかは、自分や家族が決めればいいのです。人にどう思われようと、自分がいいと思ったことを選択していけばいいのです。大事なのは自分や家族の声であって、得体のしれない誰かの声ではありません。洋服一つにしても、家具を決めるにしても、誰かに合わせた生き方は常に誰かの道を参考にしないと生きていけなくなるのではないか、そんな気がして怖くなります。
いろんな人のいろんなやり方があっていいのに。いろんな生き方があっていいのに。SNSの世界にいると、正解が一つしかないような、そんな窮屈さすらも感じます。
自分の「好き」を誰かに決めさせない。みんなが「嫌い」でも自分が好きならそれでいい。
セオリーなんて無視して、自分の心で選択して、最高の人生にしていこうではないか!
黒井さんの記事から、こんな結論を導き出した42歳の最終日。いい43歳のスタートとなりそうです。
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