はじめてのキャンプ

「長いから今日は半分までね」そう言って、20時に寝るつもりだったのに今にも21時を回ろうとしている時計を見てため息をつく。もっと早く寝てほしいのに。眠くてダラダラしながらもリクエストする子供たちに、しぶしぶ『はじめてのキャンプ』を開いて、少し早口気味に読み聞かせを始める。
『あさえとちいさいいもうと』『おでかけのまえに』『こんとあき』『はじめてのおつかい』など、我が家には林明子さんの作品や作画を担当した絵本が数冊ある。どの作品も、喜びや悲しみの表情がまるでそこに命があるように描かれていて、何度見ても上手だなぁと見惚れてしまう。私が子供の頃から見覚えのあった『はじめてのキャンプ』を図書館で手に取った時には、なんだか読むことにワクワクした。
読み聞かせの途中で、携帯が鳴った。夫かと思えば義母からだった。何かと思って出ると「お誕生日おめでとう」と一日遅れた事を詫びる為の電話だった。なんて律儀で優しい人なんだろう。いつも私はLINEで伝えてしまうのに。昨日は何した、こっちは暑いだの近況を伝えた後、「今何してたの?」という義母に「みんなで絵本を読んでいました」と伝えると、少し申し訳なさそうに「そうか、じゃぁまた金沢で待ってるね」とまた明るい声で電話を切った。すると、早く寝れなかったイライラがどこかへ飛んでいたことに気づいた。義母は私にとって目標の人。その思いがますます強くなった。
電話の間、先を読みたくてウズウズしていた息子はパラパラとページを捲って再開が待ち遠しい様子だった。さぁ、続きを読もう。林さんの可愛いイラストが子供たちの興味をそそり、またキャンプというテーマも子供たちにとってはワクワクするもの。半分までねと言っていた読み聞かせも、いつの間にか最後のページへまっしぐら。キャンプファイヤーの火を着ける場面では「この火どうなるの?!」とワクワクを隠し切れず、目を輝かせながら向き合っていた息子と娘。キャンプファイヤーを囲って踊るシーンには、まるでそこにいるかのように嬉しそうに笑ってた。怖い話をするシーンでは、ハッと息をのむような仕草も。子供たちがのめりこんでいる様子を感じ取れて、読み手の私にも感情がこもる。キャンプファイヤーの火が消えたあと、真っ暗な中で見る満天の星。怖くてひと時も大人から離れたくないなほちゃんの様子が見事に描かれていて、私もグッと引き込まれた。表情の見えない絵で、どうしてこんなにも伝わるのだろう。と、林さんの絵をやっぱり称賛せずにはいられなかった。
読み終えると、「読んじゃったね」と最後まで読んでもらえた息子は満足気だった。
あのまま、「もう21時だから今日はやめとこう」と不機嫌なまま眠りについていたら、子供たちにとって良い一日の終わりとはならなかったはず。読んでよかった。やっぱり本を読んで寝るって、いいな。
私も子供たちも『はじめてのキャンプ』に助けられた昨日の夜のこと。

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\ 私が書いています /

神奈川県出身。
夫と2人の子供と4人暮らし。
20代の頃スペインに約1年間滞在した経験があり、ピソでの各国からの友人たちとの生活は、今思えばまるで映画の中のような世界でかけがえのない時間となった。しかしあの時必死で身につけたスペイン語はいつの間にか風に吹かれて消えていった。今となってはあの1年が壮大な妄想だったのではないかと思い始めている。信頼と語学力は努力を怠れば一瞬で消え行くのである。
心に残る本は『Jimmy』。もしも人生を悲観する日が来たら再び手に取ろうと決めている。

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